今日9月7日は、明治から昭和初期にかけて活躍した作家・泉鏡花を偲ぶ「鏡花忌」です。
幻想的で美しく、どこか妖しい世界を描き続けた鏡花の作品は、今なお多くの読者を魅了しています。
そんな鏡花忌におすすめしたい一冊が、立東舎の「乙女の本棚」シリーズから刊行されている『夜叉ヶ池』です。

☆『夜叉ヶ池』(泉鏡花/著、しきみ/絵・立東舎、リットーミュージック(発売)・2022)



『夜叉ヶ池』は、1913年(大正2年)に発表された戯曲であり、山深い村を舞台に、人間の世界と異界とが交わる幻想的な物語です。
物語の中心にあるのは、越前の山中にあるという夜叉ヶ池です。
そこには龍神や妖怪たちの世界が広がり、人間の世界とは異なる時間と理が存在しています。
一方、人間たちの側にも、約束や恋、信仰、そして命をめぐる葛藤があります。
美しく静かな山村の風景が、次第に不穏な気配を帯びていく展開は、鏡花ならではの魅力です。

特に「乙女の本棚」版でおすすめしたいのは、物語そのものだけでなく、イラストと一緒に鏡花の世界を味わえるところです。
文章だけでは想像するしかなかった異界の風景や登場人物たちが、現代のイラストレーターによって鮮やかに描き出されています。
古典文学というと少し難しそうに感じる人にも、物語の世界へ入っていく入口としてぴったりの一冊です。

また、小説とは違い、舞台で演じられることを前提に書かれているため、登場人物たちの台詞を追いながら読み進めていく構成になっており、声や動きを想像しながら楽しめるところが、この作品の大きな魅力です。

今日9月7日にはぜひ『夜叉ヶ池』を手に取ってみてください。
物語を読むだけでなく、舞台を観るような感覚で楽しめる作品です。
人間の世界と幻想の世界が交差するなかで描かれる、恋や約束、そして美しくも切ない物語。
ページをめくりながら、鏡花独特の言葉の響きと世界観を味わってみてはいかがでしょうか。

2026年
10月10日(土)
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