9月4日は「くじらの日」です。
「く(9)じ(4)」の語呂合わせから制定された記念日で、「鯨と日本人の共生を考える日」とされています。
「くじら」と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。
大きな海の生き物、捕鯨、鯨肉料理――。
人によってさまざまなイメージがあると思います。
四方を海に囲まれた日本列島で暮らしてきた人々は、先史時代からクジラを利用してきました。
かつて、勇猛果敢な鯨組の漁師たちが命がけで仕留めたクジラは、食用だけでなく、鯨油や工芸品の材料など、ほとんど捨てるところがないほど、さまざまな形で人々の暮らしを支えていました。
そして日本人は、クジラから多くの恵みを受ける一方で、その命に対する感謝や供養の気持ちも大切にしてきました。
捕鯨が盛んだった地域では、クジラを供養する風習が生まれ、現在も全国各地に鯨供養の塔や塚、墓などが残されています。
その数は50か所以上にのぼるといいます。
今回ご紹介するのは、小松正之さんの『日本人とくじら―歴史と文化― 増補版』(小松正之/著・雄山閣・2019)です。

本書では、日本における捕鯨の歴史や文化をたどりながら、全国各地に残るクジラとの関わりが紹介されています。
さらに、くじらの食文化にも目を向け、「くじら食探訪」として、地域に根付く料理や、それを守り伝える人々へのインタビューも収録されています。
そして、この中には、実は南関町にゆかりのある企業へのインタビューも登場します。
全国各地のくじら文化を知る中で、私たちの暮らす南関町との思わぬつながりに出会えることも、この本の面白さのひとつです。
2017年に刊行された初版に加筆された増補版では、国際捕鯨委員会(IWC)をめぐる歴史や、日本が国際捕鯨取締条約から脱退するまでの経緯、商業捕鯨再開など、捕鯨をめぐる国際的な動きについても大幅に加筆されています。
くじらをめぐっては、文化、食、産業、環境、国際関係など、さまざまな視点があります。
だからこそ本書は、「捕鯨に賛成か反対か」という二択だけではなく、日本人がクジラとどのように関わり、その命と恵みをどのように受け止めてきたのかを知るきっかけを与えてくれます。
9月4日の「くじらの日」。
遠い海の向こうの話ではなく、私たちの暮らしや地域にもつながっている「日本人とくじら」の歴史を、この一冊からひもといてみてはいかがでしょうか。


